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2016年06月号

vol. 111

あなたは1文字を残して顔を上げられるか

~部下から声をかけられたとき、できるマネージャーは「ちょっと待って」とは言わない~

できるマネージャーたちの日々は、判断と指示の連続である。
彼らは、自分の仕事などは後回し。彼らはまず、組織を動かすことを最優先とする。
そして、そんなできるマネージャーたちには、ある共通の流儀があった。

誰でもそうだろうが、考え事をしているときに声をかけられたなら、
「ちょっと待って」と言いたくなるのは、ごくごく自然な反応だろう。
だが、よくよく周りを観察してみて欲しい。
できるマネージャーは、例外なく、声をかけられたその瞬間、
自分の思考を惜しむなく中断し、スッと顔を上げ、ニコやかに「どうした?」と反応をする。
これは、できるようでできない所作だ。一瞬の躊躇もない。イヤな顔など微塵もない。

この思考の中断が、どれだけスゴい技なのか。例えばこんな感じだ。
メールをもう打ち終える瞬間だったとしよう。
「よろしくお願いします」と打てば終わりだったとしよう。
だが「お願いしま…」まで打って、最後の1文字の「す」だけを残してそこでメール作業を中断し、
声をかけてきた人に全神経を向ける難しさだ。これは気持ち悪いどころではないだろう。
普通の人なら「ゴメン、ちょっと待って」と、最後の1文字を打ち終えてから顔を上げるだろう。

極端な話、私は、この「す」の1文字を残して顔を上げられるかどうかで、
マネージャーの達人レベルが決ってくるのだと思っている。
できるマネージャーは、自分が公の立場にあるときは、自分のためには1ミリたりとも時間を使わない。
私はそう思っている。そして、そうなりたいと思っている。
さあ。あなたは、1文字を残して顔を上げられるだろうか。

声をかけられて、顔を上げるシーンではないが、
すべての時間を部下に捧げる、達人たるマネージャーの例を2つほど紹介しよう。

まずは、IT系ベンチャーの経営者だったF女史のこんなシーンだ。
彼女がヤクザな客に呼び出され、私がたまたまそこに同席をしたことがあった。
客から難クセをつけられ、グチャグチャに絡み合った糸は、そう簡単には解けそうもない状況だった。
そして、その不愉快な席を立ち、客のいたビルから出た瞬間、彼女の携帯が鳴った。
それは彼女の部下からだったのだが、その部下も、何らかのトラブルに巻き込まれ、その「泣き」の電話だった。

F女史はたった今、自分が難クセをつけられたばかりだ。間違いなくイライラの頂点にあったはず。
だがF女史は、そんなことなどおクビにも出さない。
泣き叫ぶ部下に「大丈夫だから」と励まし、適切な指示を与え、カラカラと笑っている。
F女史は、電話を受けたとき「後にして」などとは、一言も言わなかった。
横でその振る舞いを見ていた私は「ほー!」と見惚れてしまったのを覚えている。

次も「たいしたモンだ」と感心をした例だ。大手通信企業のU部長のこんなシーンだった。
U氏を交え、数名で飲みに行ったときのことだ。宴もたけなわのときに彼の携帯が鳴った。
U氏は「ウン」「ウン」と聞き入っている。そして「分かった」と言ってスックと立ち上がり、
「すいません!中座させて下さい。急用で社に戻ります」と。
「何があったの?」と聞くと「部下が提案の中身を相談したがってる」と言うのだ。
我々は「えっ?それだけで?」「それだけで会社に戻るの?」と。

サラリーマンなら、飲み始めたら「追いかけない」が暗黙のルールだろう。
とんでもないトラブルや不測の事態ならいざ知らず、
部下が夜遅くにオフィスで、提案内容に頭を悩ませているだけで「帰ってやる」と言うのだ。
だが彼は、コメ粒ほどのイヤな顔もせず、当り前といった顔で会社に戻って行った。
もちろん中座された我々に、最大限の配慮と心遣いを見せての退席だ。
これもできるようでできない所作だろう。彼の部下たちが、いかにU氏を信頼しているかが分かる気がした。

そう。できるマネージャーは、とにかく徹底している。
彼らは、部下の前では、1ミリたりとも自分のため時間は使わない。この完璧度が100%なのだ。
「1秒や2秒を待たせるだけの違いでしょ?」と思うかもしれないが、これが大違いなのである。
修行の身なら、まだまだ未熟な「小坊主」と、仏の域に達した「大和尚」ほどの違いがあるかもしれない。
いるんです。こういうホンモノ達が。
彼らは、こちら側から見えないだけで、実は日々「1文字」を残したままで顔を上げているのです。

さて、ここからは余談となる。

これら、できるマネージャー達は、この卓越した達人技の見返りに、
洩れなく「ステライルコックピット」という「自分だけの時間帯」をそっと確保している。
ステライルとは「無菌室」の意味。コックピットとは「航空機の操縦室」のことである。
なので「ステライルコックピット」とは「無菌状態の操縦室」という意味となる。
どういう意味なのか説明しよう。

飛行機事故の90%は、離着陸のときに起こっている。
その離着陸の危険な時間帯のことを「クリティカルイレブンミニッツ(危険な11分)」と言う。
離陸してからの3分間と、そして着陸前の8分間。この合計11分である。
この一番、緊張を求められる11分間だけは、客室乗務員とコックピットとの連絡は完全に遮断される。
この状態を指して「ステライルコックピット」と言うのだそうだ。
操縦士が、危険な離着陸の操縦に、完璧に集中ができるようにするためである。

実はこの「ステライルコックピット」を、先のF女史も、通信企業のU部長も持っていたのである。
ある時間帯だけは、部下とのコンタクトを一切、絶つのである。

F女史は、自宅で風呂あがり、子供を寝かしつけ、すべてのメールを打ち終え、
頭にバスタオルを巻きつけ、缶ビールを傾け、そこからが「ステライルコックピット」となる。
ここで携帯電話の電源を切ると言う。その瞬間、彼女は自分の仕事だけに集中をする。
そしてこう言うのだ。「この時間帯だけは誰にもジャマされたくない」と。

U氏も「朝だけは隠れて1人になる」と教えてくれた。
彼は、早朝6時に出社をする。無菌室を作るためだ。
残業している部下はむろんいないし、まだ誰も出社もしていない時間帯だ。
U氏も「この時間帯だけは誰にもジャマされたくない」と、同じセリフを吐く。
部下が出勤してくるまでの2時間。この2時間がU氏の「ステライルコックピット」となる。

できるマネージャーほど、この「ステライルコックピット」を持っているようだ。
だが共通して、この「ステライルコックピット」のことは、部下にも誰にもナイショらしい。
「ステライルコックピット」は、自分だけの「隠れ書斎」なのだろう。
だが、この「隠れ書斎」があればこそ、
彼ら、できるマネージャー達は「どうした?」と躊躇なく、スグに顔を上げられるのだ。

さて、これは余談の余談だが、
私は、まだまだ「ゴメン!ちょっとだけ待って」の「小坊主」のクラスからは出られていない。
にも関わらず「ステライルコックピット」だけはちゃーんと確保をしている。
ただし、ジャマはいくらしてくれても構わないが、
あと1文字だけ打たせて欲しい。

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 社長 谷洋の独り言ブログ 日々是好日