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2015年11月号

vol. 104

社長は未解決がお好き

~社長という人種はなかなか納得をしたがらない生き物のようだ。その生態を探ってみよう~

「ウチの社長はなかなか首を縦に振らない」「ウチの社長は朝言ったことを平気で夜に覆す」
などとウンザリしている方も多かろう。
そう。社長に、モノ分かりのいいヤツなんて一人もいないのである。

ソフトバンクグループの会長、孫正義氏のスピーチに有名な言葉がある。
「登りたい山を決めることで人生の半分が決まる」と。
なるほど。名言だろう。だがこれは、ある特定の人種にだけに当てはまる名言なのだ。
今回は、その特定の人種の代表格である「社長」という生き物について紐解いてみる。

ある女の子が「世界一のパティシエになりたい」と決意したとしよう。
これが「登りたい山」を決めた瞬間である。
登りたい山さえ見つかれば、あとはその夢に向い、死にモノ狂いで頑張るだけだ。
イバラの道も、長い坂道も、楽しくて仕方がない。苦労を苦労とも思わない。
これまさに孫氏の言う通り。だから孫氏は若い人に「山を見つけよ」と言うのだ。

だが残念ながら、これがすべての人に当てはまる名言かと言えば「ノー」だ。
山を見つけ、その山を制覇してやる!と血を躍らせる人種とは、
孫氏のような「お化けのような闘争心を持つ人間」であり、
見つけた山が高ければ高いほど燃えるのは、孫氏のような「お化けのような情熱家」だけである。
山を見つけても、誰もが奮い立つモノではない。
ほとんどの人は山を見た瞬間、「あ、これはムリだわ」と思うのがフツーなのである。

話を少し逸らすが、私の知人に「納得」という行為を研究している御仁がいる。
その御仁は脳科学が専門ではない。形成外科のドクターなのだが、彼の話が非常に面白い。

人間の脳は、常時、本能的に「納得」をしたがっていると言うのだ。
人間は、一度でも「納得」をすれば、それについては、もうそれ以上に脳を使いたくないらしく、
人間は、脳の負担を下げるべく、次々と納得し、脳内に残る「懸案」を次々に消していくそうだ。
これは脳の「負担回避能力」の一種で、立派な「生存欲求行動」であるらしい。

さらに余談だが、人間の脳には、これによく似た「忘却能力」というのがある。
人間は、生き死にに関わる体験をしたとき、そのときの「恐怖」をずっと忘れずにいたら、
生きていることに耐えられないほどの不安を抱えてしまうようで、
その「防衛本能」として、「忘れる」という行為を、無意識に行っていくのだそうだ。
簡単に言えば、都合の悪いことはどんどんと忘れていく有難い機能なのである。

ちなみにこの「忘却能力」には限度もあり、あまりにも怖い体験をし、
記憶中枢にそれを極めて強く刻み込まれたら、もうそれは忘れられなくなってしまい、
最近、よく耳にする「トラウマ」という症状に陥ってしまうらしい。

さて、脳内にある「懸案」は、この「恐怖」とまではいかないにしても、
脳からはサッサと消してしまいたい異物であり、人はそれを無意識に処理していこうとしている。
そう。人は次々と「納得」し、次々と「懸案」を消していく生理機能を持っているワケだ。

ちなみに日本人は、この「納得」という行為を、さらに得意とする民族でもあるらしい。
これは、日本独特の教育や、幼少からの躾の賜物だそうだが、
「わがままを言わない」「自分を言い聞かせる」「譲り合いの精神」など、
日本人にとって「納得」は「民族のDNA」でもあるのだ。

さてところが、ところがだ。この日本人の中にも、ことさらに脳を休めようとはせず、
テコでも「納得」をしたがらない人種がいると言うのだ。
それが、孫氏のような、夢を追い続ける「お化けのような情熱家」がその人であり、
そしてこの人種は、「社長」という職種に圧倒的に多いと言うのだ。

社長という人種は、納得が行かなければ徹底的に抗い、徹底的に突き詰めようとする。
「もういいじゃないですか」と言っても、なかなか首を縦には振ってはくれない。
だから社長の周りには、未解決の懸案が、いつでも山のように積まれているのだ。
そして不思議にも、社長はその未解決だらけの状態を「嫌いじゃない」と平然と言うのである。

そんな連中が「登りたい山」を見つけようなもんなら、犬のように走り出し、
それこそ、登れない事情が見つかれば「なぜだ!なぜなんだー」と大騒ぎをし始める。
周りは「ヤレヤレ…」となる。簡単には諦めてくれないのである。

さて、もうお分かりだろう。
実は「登りたい山を決めることで人生の半分が決まる」という名言は、
このように、目の前に山が現れたなら、それを嬉々として犬のように走り出してしまう、
「社長」という、ヘンな人種のためだけの「名言」なのである。

世の多くの人は、山を見つけられないのではなく、
山が見つからなくても「まあ、それはそれでいいよ」と納得する人であり、
山を見つけても「まあ、低い山で手を打っとこうよ」と納得する人であり、
山に登れなくても「まあ、仕方がないよ」と納得をする人がほとんどなのだ。
世界人口の99%はそんな人たちだ。

だが私は、それがイカンと言ってるワケではない。
孫氏にも、仕事以外では「そこは何でもいいよ」とこだわらない分野もあるはずだ。

小さい頃に「将来、昆虫博士になりたい」と言ってた男の子の99%は、
いつかどこかで「博士になれなくてもいいや」と納得し、
残り1%の、なかなか納得しないヘンなヤツだけが「昆虫博士」になってしまうのだ。
要は、人とは、納得しないヤツほど、大事を成すのである。

「社長の納得」は次のようなパターンで昇華される。
高い山が100だとして、今いるところが10だとしたら、その90のギャップがどうしても許せない。
そこで「90を埋めてやる」と、強い「動機」を生み出し、
あくなき「行動」をもってその90を埋めることによって「納得」を得るパターンだ。

一方「フツーの世間の人の納得」は次のようなパターンで昇華される。
高い山が100だとして、今いるところが10だとしても、その90のギャップは気にならない。
「まあ目指すは20ぐらいにしておこう」とか「私には100の山はムリだな」と早々に諦め、
90を埋めてやるという「動機」さえ生み出さず、何の「行動」も起こすこともなく、
サッサと諦めることによって「納得」を得ていくのである。

ちなみに、「社長」になった瞬間、「納得をしなくなる」のではない。
「納得」をしない人が、「社長」になっていくのである。
このブログを読んでくれている「社長さん」には、きっとその自覚があるはずだ。

どうだろう。貴方はこんな厄介な脳を持つ社長の首を縦に振らそうとしているのだ。
これが簡単であるはずがないではないか。
社長は「納得」を嫌い「未解決」が大好きなのだ。実に困った生き物である。

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