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2013年4月号

vol. 073

悠久のニューヨーク

~世界は広い。日本で成立するビジネスもアメリカでは存在さえしないのか~

ニューヨーク(以下:NYC)で体験したある事件。
日本が世界のスタンダードでないことは薄々は知っていたが、世界は広い。
「ビジネスの本質」とはいったいどこにあるのだろう。

私はベンチャービジネスの熱狂信者である。
これまで世になかった新しいビジネスを夢想するのが楽しくて仕方ない。
そんな私の「新しさ」の着眼点は、
「日本人の特性」を狙うところ多大なのだ。

要するに「日本人ならここに金を使うだろう」と、
日本人の琴線に触れるビジネスを探るのだ。

例えば「路線検索」。
電車、車、徒歩。どこからどこまで、何分で行けるかを教えてくれる。
こんなバカ几帳面なサービスは海外にはない。

例えば「ビジネスマナーを教えるサービス」。
日本以外ではあり得ないサービスらしい。
礼節を重んじる儒教の国、韓国にさえ見当たらないそうだ。
これも日本人ならではのビジネスだ。

私もこれらのビジネスを海外で成立させようとは思ってない。
だが、「えっ?これは成立するでしょ!」と、
当たり前のように思うビジネスが、
海外では存在さえしないことに、ある日、驚かされたのだ。

ベンチャーの国、アメリカ。
そこで「ビジネスの本質」を垣間見たある出来事を紹介しよう。

NYCの地下鉄。
路線の複雑さは東京の比ではない。
路線数は27だが、同じ路線を複数の線が走っていたり、
列車が途中で行先を変えたり、
アナウンスもせずに平気で入るホームを変えたりもする。
ドアの開閉時間はマチマチだし、切符の自販機はガチャポンだ。
駅看板も社内アナウンスもなく、勝手に降りて下さいって感じだ。

まあそんなテキトーな地下鉄なのだが、
どう考えても理解し難い出来事に遭遇したのだ。
10年ほど前だ。
地下鉄に乗って、マンハッタンの南端に向かった時の事だ。
いきなり脂ぎった黒人の車掌が車両に飛び込んで来て、
両手を大きく左右に振り、何か大声で叫んでいる。

その時、私は妻と娘と一緒だったのだが、
危害を加えられるのではないか、と身構え、家族を背中に押しやった。
だがどうやらこの車掌、何かを伝えようとしている。
「前の車両に移れ!」と言ってるようだ。
意図が分からない。
何が起こったのだ。

ゾロゾロと隣の車両に移る乗客。
皆、「納得顔」をしている。
さっぱり分からない。
我々家族は、しっかり抱き合ったまま固まってしまった。

マンハッタンの南、サウスフェリー駅。
この駅、な、な、なんと、車両よりホームの方が短いのだ。
あり得ない!
もし最後尾の車両に乗ってたら、
駅に着いても、トンネルの中で止まっているだけなのだ。

そう。飛び込んできた黒人の車掌は、
「次の駅で降りるヤツは前の車両に移れ」と叫んでいたのだ。
これを毎日、毎日、365日、やるらしい。
日本では100%あり得ない。

現地のアメリカ人に後で聞いてみた。
「なぜホームを伸ばさないんだ?」
「ん?なぜホームを伸ばさないといけないのだ?」
「え?だって降りれないでしょ?」
「ん?前の車両に移れば降りれるよ」
「じゃあ車掌は、毎回あのパフォーマンスをさせられるのか?」
「彼は自分の仕事に誇りを持ってる」
「いや、そういう意味じゃなくて…」
という会話になった。

日本ならすぐに、ホーム延伸工事に取りかかるはずだ。
そしてその工事が終わるまで、
最後尾の車両には、イヤと言うほど注意書きが貼られ、
何度も何度も、親切なアナウンスが繰り返されるだろう。

そしてそんな状況下では、
ワンサカと「ビジネス」が生まれ出てくるはずだ。
それは、ホーム延伸工事だし、注意書きのポスター製作だし、
最後尾のドアだけ開かないようにするソフトウェアの改良だろうし。
仕事ネタは山ほどもある。

だがアメリカでは、ビジネスは生まれない。
誇り高き車掌がいる限り、ビジネスの源泉はそこにはないのだ。

開拓精神溢れるベンチャービジネス発祥の地、アメリカ。
広大な国土と、細かいことを気にしないこの鷹揚な国民性。
黒人の車掌は、今日もイキイキと、あのパフォーマンスをするのだろう。
そしてそれを納得顔で受け入れるニューヨークの市民。
この国の「ビジネスの本質」はいったいどこにあるのだろう。

それを見極める「嗅覚」を研ぎ澄ませるため、
たまには行かねばならないだろう。
世界のアチコチに。
この鷹揚で、愛すべき、悠久のニューヨークにも。

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 社長 谷洋の独り言ブログ 日々是好日