サリーはわが恋人
私事ではありますが、今年になって自家用車を買い換えました。
もしかしたら人生最後の車になるかもしれないと思ってしまい色々迷っていたのですが、
そんなときふと思い出した車を題材とする2本の小説を今回はご紹介しようと思います。
サリーはわが恋人 アイザック・アシモフ
現在では車の自動運転の技術も進み
一部地域では完全自動運転の実証実験も始まっていますね。
この小説の世界ではさらに進んだ完全自動運転の車が余生を過ごす車の養老院が舞台です。
主人公はこの養老院の管理者で、現役を外れた車たちを愛して整備に余念がありません。
車たちも主人公を慕い平和に暮らしています。
車にも自我があるようで怒った時はエンジン音が高くなり、笑う時はドアを開け閉めします。
好きな人にはエンジン音を極力下げてそっと寄り添うように近づくそんな車、
どうもエンジン音の高低で車同士が会話しているようでもあります。
いつの時代でも悪いことを考える人はいるようで、
この養老院の車を盗み、エンジンを新しい車体に付け替え新車のように見せかけて
大儲けしようとする輩が出てきます。
ところが自我のある自動車ですから簡単にはいきません。あっという間に返り討ちにあってしまいます。
管理者はこのことから車同士が連携して人類の支配に乗り出すんじゃないかと考え始め、
人類の未来に恐怖を覚えるのでした。
アイザック・アシモフはロボット工学三原則で有名な作家ですが、
以外と推理小説も執筆されていて「鋼鉄都市」が有名ですね。
人間の刑事と見た目は人間に見えるロボットがコンビを組んで
難事件を解決するというストーリーになっています。
それ以外にも自分の作ったロボット工学三原則の矛盾を突いた短編小説を幾つか発表しています。
「われはロボット」という名前で短編集が出ていますので興味のある方はこちらもご一読ください。
ガソリン生活 伊坂幸太郎
こっちの小説は現在の車が主人公です。
普通の自家用車が自己意識を持っていたらという設定になっています。
排気ガスの届く範囲の車と会話して情報交換しているわけですが、
自分の意志で車を動かしたりクラクションを鳴らしたりは出来ませんし、
人間と意思の疎通が取れているわけでもありません。
そんな中で事故をした車の横を走ったときは悲しみ、自分が廃車になる事を心配したり、
横を走っている車に嫉妬したり、いつも止めている駐車場の車と世間話をしたり
およそ人間社会の縮図を映し出しているような形でお話は進んでいきます。
推理小説ですから犯罪とは無縁ではなく、有名女優の失踪事件に巻き込まれたり、
主人公が盗まれたり、人が死んだりしますが
伊坂幸太郎さんですので最後はホッとできる後味の良い作品になっています。
さて、購入した車は結果として軽自動車となりました。
軽なんですが、後席は電動スライドドアですし、車間距離を一定に保ったり車線をキープする機能が有ります。
また、スマホからインターネットを通してエンジンを始動したりエアコンを点けたりもできるようです。
自動ブレーキシステムは付いていないので、
これからはアクセルとブレーキを踏み間違えないよう慎重に運転していこうと思います。