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2018年02月号

vol. 131

金麦を買うオヤジたち

~最強のプロモーション手法「スケベ心」はマーケットリサーチでは計れない~

商売に必要不可欠な科学と言えば「マーケティング」だろう。
この科学で消費行動を分析すれば、何をどうやって誰にいつ売ればいいのかが分かる。
だがこの科学も「スケベ心」には何の説明も要らない。

いきなり話は飛ぶが、酒税のカテゴリーで「ビール」ではなく「発泡酒・第3のビール」というジャンルがある。
この「発泡酒・第3のビール」の中で、これまでに一番売れた銘柄は何か、ご存知だろうか。
もしアナタが45歳以上で、人並みにスケベで、そして恐妻家で、家では「発泡酒・第3のビール」しか買ってもらえない人なら、
アナタはズバリ、その銘柄を言い当てるだろう。

そう。当たりです。サントリーの「金麦」です。
最近はサッポロの「麦とホップ」や、キリンの「のどごし生」も追従しているらしいが「金麦」の強さは揺るがないそうだ。
ではなぜ「金麦」がそれほど売れるのだろうか。答えはいたってシンプルだ。
「金麦」のCMをしている「壇れい」がカワイイからである。

サントリーの「金麦」のCMを知らない人はいないだろう。
夕映えの川の土手、前掛けエプロンをしたカワイい若妻に扮する壇れい。彼女は夫の帰りを待っている。
そしてあの媚びた笑顔と、上目遣いの甘え声、そして、あのあざとい小悪魔的な仕草。これはたまらない…。
世の中年男性から「ああ…こんな奥さんがいたらなぁ」という声が上がるような、見え見えの演出が散りばめられているCMである。
女性が外で働くことが当たり前となった現代、「家で待ってるっ」と甘えた声でつぶやく「壇れい」の昭和の女性像は、男心をくすぐる。
バックには、あの懐かしいオールナイトニッポンのオープニングが流れ、オジサマたちの郷愁を呼び起こす。

この「壇れい」のCMは、好き嫌いがハッキリと分かれる。
年齢を問わず、ほぼ総ての女性から「媚び媚びで大キラい」と、評価はとんでもなく低い。
若い男性陣からも「あの古臭いCMに共感するところはない」と、これまた低い評価だそうだ。
だが、50歳~60歳の男性、つまり「オヤジ族」からの支持は、天に昇る龍がごとく、他を圧倒する人気を博しているのである。
そう。オヤジたちは狙い撃ちをされており、そしてその狙い通り、この世代だけで、金麦の売上のほとんどをカバーしているのだ。

サントリーも「確信犯」を認めている。
「若い女性に『金麦』を買ってもらおうなんて考えてません。ターゲットは年配の男性だけですから」と。
つまり、この狭い狭いセグメントに爆発的に売れるなら、女性や若年層で1缶も売れずとも「全く構わんです」と開き直る。
これぞ、「マーケテットセグメンテーション戦略」の最たる成功例ではないだろうか。
この「壇れい」の媚びた、郷愁たっぷりの金麦のCMは、なんと60本を越え、まだそのシリーズは続いている。

ズバリ、我々「オヤジ族」は狙われたのだ。
本来、ワン・トゥー・ワンマーケティングは、ごく限られた狭い市場に、広告資源をピンポイントで照射することで成立するのだが、
すべての消費者が目にするTVCMで、これほどあからさまに「オヤジ」だけを狙われた日にゃ、
サントリーも開き直っているが、買う側のオヤジたちも、もう認めるしかあるまい。「壇れいのために『金麦』を買っている」と。

ただ、面白い市場調査の結果があるそうだ。
実はこの「金麦」を買っていく年配男性に、その売り場で、ダイレクトにアンケートを試みた結果なのだが、
「なぜ『金麦』を買いましたか?」という問いに、その理由の1位は、ダントツで「美味しいから」だったのだそうだ。
皆、大ウソつきである。
全国のコンビニのレジ係りが、会計のたびに、性別と年齢層を打ち込んでいることをご存知だろうか。
そこで歴然なのは、「金麦」を買った大半の客は、50歳台から60歳台の男性であり、これが実態だ。
当然、「スケベ心」が「金麦」を買わせているのである。

実は、こういった「オヤジ族」を狙うお酒のCMは、情け無いほど単純に、同じ「疑似餌」が用意されている。
仕事と人生に疲れた「オヤジ族」を癒せる女優は「壇れい」の他、石田ゆり子、井川遥、小雪、安めぐみ、吉高由里子などが続く。
いずれも金麦のCMよりは控え目だが、とにかくチューハイの石田も、トリスの吉高も、角の小雪も井川も、みんな「媚び媚び」である。
この「お酒の癒しのCM」のハシリは「サントリーレッドの大原麗子」らしい。
あの「少し愛して、長~く愛して」という、とろけるキャッチコピーから「オヤジ狩り」が始まったのだそうだ。

何を隠そう、この私も、スーパーでは「金麦」を大量買いするのだが、その理由は間違いなく「壇れい」である。
だが、妻には絶対にそれを言わないし、バイト学生が問いかけてくるアンケートには、間違いなく「美味しいから」に○をつけだろう。
これを、ある人は「後ろめたさの消費者行動」と呼んでいた。
これは、まっとうなマーケットリサーチなんかでは掴み切れない「スケベ心」が、消費者行動を決定付けているのである。
このブログを読む中年のアナタも、心当たりがあるはずだ。自分の胸に手を当てて問いかけてみて欲しい。

この「後ろめたさの消費者行動」は、何も男性だけのものではない。ときに女性も当てはまるそうだ。
例えば、60歳を超えた女性が、若い女性が使う化粧品を、まるで「娘に頼まれて」なんて顔をして買おうとする行動がそれである。
そんな行動を、娘には絶対に知られたくないし、むろん親しい友人にも言わないし、誰にもナイショの「後ろめたい行動」なのだ。

さてこの「スケベ心」で、世の購買意欲を大きく動かした金字塔をもう1つご紹介しよう。もう40年ほども前の出来事だ。
一時期、若い男性が、こぞって「高級一眼レフカメラ」を買いに走るといった流行があった。
市井のド素人が、皆、プロ級のカメラマン気取りである。
火付け役は、当時まだ、熊本大学の現役女子大生だった「宮崎美子」を、望遠レンズで盗み撮りをした、あのCMである。
「今のキミはピカピカに光ってぇ~♪」という曲に乗せて、一世を風靡したあのCMだ。

望遠レンズが決め手である。モデルとなった「宮崎美子」は、ちょっと太目の健康的な女の子。
周りに誰もいないことを確かめながら、木の陰で、TシャツとGパンを脱いでいく。その下には、はちきれんばかりの青いビキニ。
何ともキュートなCMに、多くの若い男性たちが、ハートを射抜かれたのだ。
そのCMは、大学生から社会人になりたての、若い男性層を狙った広告で、
なけなしの小遣いをはたき、それまで購買層ではなかった若者が、一気に「一眼レフカメラ」のユーザーになったのがこのときである。

幻想だったのだ。300mmほどの望遠レンズで、気になる素人の女の子を、望遠で切り取る。
それで女の子のハートを射止められるはずもないのだが、
密かな「スケベ心」で、女の子の、はにかむ着替えのシーンを「自分だけの宝物」にできると思ったのだろう。
「隣のお姉さん」という写真集も出た頃で、素人カメラマンと素人モデルの、一大一眼レフカメラブームの到来となったのである。

私も当然「一眼レフ」を買いに走り、私の周りのスケベ野郎も、こぞって一眼レフを手にしたのである。
ミノルタカメラに「してやられた」のは間違いなく、「宮崎美子」に皆が抹殺されたのである。
これも、金麦と同じ「スケベ心によるマーケティング戦略」の典型例だ。
身に覚えがある方も多かったのではないだろうか。

さて、ここで告白をするが、私はこの「スケベ心」を、販売促進の「一番手」に使おうとしたことがある。
後ろめたさもあり、大きな声では言えないが、
会社創業の年、すこぶる魅惑的な中年殺しの女性を、営業最前線に「刺客」として据えたことがある。
いやはや、取れるわ、取れるわ、訪問する営業先の担当者が年配の男性なら、ほぼ100%に近い成約率を得たのではないだろうか。

その年の、契約数の記録は、創業から未だ破られていない。群を抜いての獲得数なのである。
今、もうその女性は辞めていない。だから、もうこの手は使えなくなっている。
それは、あれほどの魅惑的な女性が目の前からいなくなってしまったことも理由だが、
今ならそんな戦略は、間違いなく「セクハラ」で訴えられるに違いない。確信犯であり、後ろめたさもたっぷりだ。

私は、世に「スケベ心」がある限り、それはどんなマーケティング手法をも凌駕する「訴求ポイント」だと思っている。
いつかまた、この「スケベ心」を駆使した営業促進策を、真面目に試みたいと切に思っている。
消費者の、深層心理をくすぐるマーケティングほど、オモシロいモノはない。

私は、間違いなくこれからも「金麦」を買い続けるだろう。
「壇れい」の笑顔がそこにある限り。

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