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2013年9月号

vol. 078

雨のお土産理論

~わざわざ大雨の時に来てくれた人を手ブラで帰すワケにはイカンだろうという理論~

「返報性の原理」という考えがある。
人は、他人から何か与えられたら、必ずお返しをしたくなるのです。
「受けた恩は返さねばならない」と思う心理です。

これ、実に日本人らしい、律儀な心情ではないだろうか。
だが、このすこぶる日本人らしい心情は、
多くのシーンで、巧みにビジネスに利用されてしまっている。
分かりやすい例をあげてみよう。

例えば、あなたが、車を買い替えたいと思ったとします。
そして、ちょっと下見のつもりで、近所のカーディーラーを訪ねたとします。
すると、対応してくれた営業マンがとても親切で、
こちらのどんな些細な質問も、汗かきもって答えてくれたとします。
そして、順番を繰り上げて「試乗」までさせてくれたとします。

するとあなたは、こう思うのです。
「この営業マン、多くの時間を割いて、自分のために説明をしてくれた。
そして試乗までさせてくれ、何だか、このまま帰るのは申し訳ないな」と。
そして、あなたは数日後、そこで新車を買ってしまうのです。
これが「返報性の原理」です。

日本人ならごく当たり前のこの営業マンの態度は、
外国人からは「おもてなしの心」と賞賛されてはいるが、
実は、いかにも日本人らしいのは、
車を買ってあげたいと思う「お返しの心」の方なのです。

身近な例はまだまだあります。

外出中に、コンビニでトイレを借りた時もこの心理が働きます。
「トイレだけ借りて、何も買わずに出るのはちょっと…」と思ってしまい、
買わなくてもいいペットボトルを買ってしまう心理である。
きっと誰にも身に覚えがあるはずだ。

人から「あなたを応援します」と言われたら、
自分はその人に、自動的に好感を持つ心理状態も、
この「返報性の原理」の一種だ。

そして多くの企業が、
この「返報性の原理」をビジネスで使おうとしているのです。
嘆かわしい話である。

どうやら世の中、清潔な「好意」だけで動いているワケではなさそうだ。
ビジネスは、こうやって、人の心理を巧みに操作し、
モノを買わそうとしている。
返礼を期待し、打算で好意を示すのは「偽善」であり、
これは「不敬」そのものであり、日本人が一番嫌う行為ではなかろうか。
嘆かわしい話である。

なので、私はこれをしない、と決めた。
ビジネス以前に、日本人としての美徳をまっとうしたいからだ。

だが、それでは、営業がうまく行かないのも事実である。
情けない話だが「やっちゃイカン」という気持ちと、
「やらなきゃイカン」という気持ちがいつも交錯してる。
ジレンマとなった。

だがある日、思わぬハプニングに遭遇した。
意図的に好意を与えるのではなく、
仕方なく、どうしようもなく、不可抗力的に、人に恩を与えてしまったら、
それは「罪ではなかろう」という「ヘ理屈」を見つけたのだ。

まだ若かった頃だ。
お客様を訪問する日に、たまたま大型台風が上陸をした。
ニュースでは「早く帰宅せよ」と叫んでいる。
それぐらいの大雨だった。
行くのやめようかな…と思ったが、断ることもできず、
暴風雨の中、ドボドボになって訪問をした。

すると「よく来たね。こんな雨なんだから日を替えればよかったのに」
と言われたが、律儀にも約束を守った格好だ。
すると「こんな雨に来てくれたんだから手ブラで帰す訳にはイカンな」
と、契約をくれたのです。

決して台風の日を選んだ訳ではない。
暴風雨は100%不可抗力であり、
たまたま、台風がやってきただけの話である。
だが思わず、してやったりと、ガッツポーズをした。

これ、立派な「返報性の原理」なのである。
「申し訳ないことをした」「何か報いてあげねば」「ここまでしてくれるの」
と思うのが、まさに「返報性の心理」なのである。

こんなケースもあった。
頂いたアポの日時にお客様を訪ねたら、お客様は不在であった。
スッぽかされたのである。
だが、ここで怒ってはいけない。
ここはむしろ「ラッキーだ」と思うべきだ。
次回、再度、訪問した時に、
「この前はゴメン!」と、やはり手土産を持たせてくれるのだ。
これが「返報性の原理」である。

くどいようだが、私はわざと「返報性の原理」は使わない主義だ。
(ホントかどうか怪しいが…)
私は営業に行く時、いつもこう願うのだ。
「嵐よ来い」「電車よ止まれ」「スッぽかしてくれ」と。

不可抗力によって得る「返報性の原理」の機会。
ただただ、それを心待ちにする、この健気な思いは、
ただただ、神のみぞ知る。
私のこの思いを「雨のお土産理論」と呼んでいる。

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 社長 谷洋の独り言ブログ 日々是好日