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2012年5月号

vol. 062

そのメール、明日にしようよ

~メールは送ったら最後、もう取り返せない。ビジネスメールの小さな鉄則とは~

もはやコミュニケーションツールの主役となったメール。
だがそのメールも万能無敵ではなさそうだ。
今回は、メールを書いてはならない「こんな時」を紹介したい。

ご年配の諸兄は昔「ラブレター」を書いた経験も多かろう。
だったら、こんな経験はないだろうか。
昨晩、夢中になって書き上げた「ラブレター」を翌朝読み返したら、
顔から火が出るほど恥ずかしくなって、
投函するどころか、ビリビリに破り捨てたという経験だ。

「ラブレターは読み返さずに投函せよ」という法則はないが、
ラブレターを一夜明けてから読み返すと、
「よくもこんなことを書いたな…」と、
100人が100人共、赤面するようだ。

要するに「喜怒哀楽」のそのピークの時、
気持ちの抑揚の最も激しい時に書いた文章は、
使い物にならないのだ。
例え、どれほど「冷静に」を言い聞かせてもムダらしく、
そのピークの瞬間、
自分の書いてる文章に酔ってしまっているからなのだ。

さて、ビジネス局面。
まさかラブレターを書くことはないだろうが、
それによく似たシチュエーションが「怒りの時」である。
これなら毎日ある。

カチンと来るメールが送られてきた。
すぐさま返信メールを書き始めるが、
怒ってるモンだから、文面がついつい攻撃口調になってくる。
「おっとイカン。仕事なんだら落ち着いて…」と、
「冷静」に努めようとするのだが、
これができないようになっている。

いかに、どれだけ冷静になろうとしても、
怒っている時に書くメールには、
必ず目に見えない「トゲ」が残るのだ。
この「トゲ」、簡単には隠せないらしい。

返信を受け取った側は、
「冷静」な文章の中からでも、その「トゲ」を感じ取る。
そうなれば、もう取り返しはつかない。
お互いの指先に刺さった小さな「トゲ」は、
もう抜けることはない。

では怒っている時、メールはどう書けばいいのだろう?
答えは簡単だ。
「メールを書かない」である。

怒ってる時はメールを書かないことだ。
返信は、一晩寝てから、次の日に書くのがいい。
私は冷静になれる。
絶対に大丈夫。
なんてことはこれっぽっちも思わないことだ。
書かない!
それ以外はない。

溺れない究極の方法は、水に近づかないこと。
これに勝る策はないのだ。

怒りだけではない。
この要領で、メールを書かないシチュエーションは山ほどある。
これは私の「小さな鉄則」となっている。

書かないと決めているメールにはこんなのがある。
「実は…」で始まるメールだ。
ナイショ話を打ち明けるメールなのだが、
もう、お分かりだろう。
ナイショ話は、私の知らないところでフォワードされていくのだ。
一人歩きが始まる。
もう取り返せない。

メールを書かない「こんな時」は他にも山ほどある。

「感激している時にメールは書かない」
なぜなら、過剰サービスをしてしまうからだ。

「単価はメールで書かない」
なぜなら、お客様に送るメールを間違えて外注先に送り、
「りんくるは儲け過ぎだ」と怒られたことがあるからだ。

「帰る間際にメールは書かない」
なぜなら、慌てて言葉足らずになってしまうからだ。

「悪口はメールで書かない」
なぜなら、Aさんの悪口を書いたメールをBさんに送ったら、
BさんがAさんに「こんなの来たよ」と転送してしまったからだ。

まだまだある。

私が一日に受け取るメールは100通以上。
携帯メールも加えれば、
いったい一日に何通のメールをやり取りしているのか。
だが日々、これだけメールをしてれば、必ず事故は起こる。
その事故をゼロにする方法が一つだけある。
「こんな時」は、メールを書かないことだ。

最近、若い人からのメールも多くなってきた。
だが、彼らは案外、ソツのないメールを書いてくる。
さすが、メールで育ったデジタル世代だ。

では「こんな時」にメールを書いてくる困った輩は誰だろう?
それは意外にも、我々熟年層だ。
メール文化が浅いのだろうが、
ラブレターを破り捨てた経験が、
生かされてないのはどうしたことだろう。

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 社長 谷洋の独り言ブログ 日々是好日