クツのヒモ理論
~ここが勝負!という局面で必ず解けているクツのヒモとは~
解(ほど)けているクツのヒモ。
このまま死力を尽くして駆け抜けるべきか、目の前の電車を見送ってでもヒモを結び直すのか。
生まれたばかりの企業が、直面する「解けたクツのヒモ」はあまりも悩ましい。
「谷さん『クツのヒモ理論』って知ってる?」
会社を興す時、先陣を切ったある社長に聞かれたのが
この「クツのヒモ理論」だ。
うまく行けば、飛躍的な成長を呼び込むが、
失敗すれば、木の葉のように小さな会社は吹っ飛ぶのだ。
自分の力量を、今、こなせる仕事の量を、
どう見たってその分(ぶ)を超える仕事が飛び込んで来た時に請けてみるのか?
こんなシーンは稀にある。
発車のベルが鳴る。
駅の階段を2段、3段とすっ飛ばして全速力で走り上がる。
この最終電車を逃すと帰れない。
「よし間に合う」と思った瞬間、足元が目に入った。
なんと、クツのヒモが解けているではないか。
結び直している時間はない。
しかし解けたヒモを踏んでしまったらただでは済まない。
電車には絶対に間に合うどころか、転んで大怪我するのは明らかだ。
「ああ、なんてことだ。。。」と神を恨むだろう。
「社長、これは立ち止まってクツのヒモを結べ、という教訓ですか?」
「逆らしい」
「逆?」
「ヒモを踏んで木っ端微塵になる事もあるが、この目の前の電車に行かれてなるものかと、
『オレだけは踏まん』と自分に言い聞かせ走らにゃならん時があるってことらしい」
「クツのヒモが解けてない時はないのかな?」
「いや必ず解けてるらしい。」
会社を辞めて独立する時に、
階段を死力を尽くして走り抜けるその瞬間がやって来た。
その準備は十分にしてきたはずだった。
目の前の電車はもはや「最終電車」だ。
すべてを総点検したはずだったが、クツのヒモはやはり解けていた。
「行くしかない」そう決意し、がむしゃらに走り切って乗り込んだ電車の中、
息を落ち着け足元を見たら、ヒモがちぎれ飛んだクツを履いていた。
転ばなかっただけのようだ…。
事業はギャンブルではない。
しかし、解けたクツのヒモに、立ち止まらずに駆け抜けた連中だけが、
成功を手に入れる事ができると言う。