ドラキュラのジレンマ
~商品の良さをどうやって知らしめよう?そんな試行錯誤が生んだある哲学~
世の中は「良いモノ」が溢れかえっている。でも、決して良いモノが売れるとは限らない。
「じゃあ、口車に乗せて売るのか?まさかなぁ…。」
そんな思いを我々は 『ドラキュラのジレンマ』 と名付けた。
若い熱血漢のドラキュラが長老に詰め寄った。
「長老!なぜですか!我々は、ドラキュラの世界に自信を持っています。
暗闇の街角に隠れ、いきなり人間を襲い、首を噛むなど卑怯ですよ。
夜の闇はまるで別世界。
こんな素晴らしいドラキュラの世界なら、説得すればいい。
我々が誠意を持って説けば、きっと人間も分かってくれるはずです。」
若いドラキュラの目は希望と熱意に溢れていた。
そして長老は、この若いドラキュラへの諭しをあきらめた。
若いドラキュラは、『ようこそドラキュラの世界へ!素晴らしい闇の世界があなたを待っています!』
そんなパンフレットを山ほどカバンに詰め、1年間の営業の旅に出た。
「あなたっ!ドラキュラよ!早く十字架を!」
どこへ行っても嫌われた…。
「あのぉ、お話だけでも…」と説こうとすれどもニンニクをぶつけられた。
子供にさえ石を投げつけられた。
若いドラキュラはボロボロになって村へ帰ってきた。
意気揚々と村を出てから1年の歳月が経っていた。
「辛かったろう。でも、わかったかい…。」
長老は若いドラキュラの肩にそっと手を置いた。
若いドラキュラは言った。
「襲うしかありません」と。
若いドラキュラは、悔し涙を浮かべながら唇をギュッと噛んだ。
街角で襲われた若い娘が目を覚ました。
「ああ、ここはどこ?暗闇って何て素晴らしいの…。」
ドラキュラ村に迎えられた街人は皆、口を揃えてこう言った。
「あなたに勧誘された時、ドラキュラの世界がこんな素晴らしいなんて思いもしなかった。
でもあなたの言った通り。この暗闇のお花畑はユートピアだわ」と。
そしてこうも言った。
「こんな素晴らしい世界なら、何も首を噛まなくても…。
私なら人間に、このドラキュラの素晴らしい世界を説いて回れます!」と。
長老は言った。
「ああ、行っといで。このパンフレットを持って」と。
e-コンシェルジュサービス。
こんなに素晴らしく、お客様を幸せにできるサービスも、
「いやぁ見たこともないしなぁ」と言われてしまう事がある。
そんな時、私は、横に座った若い営業マンに目配せをする。
『首を噛め』と…。